2026年9月27日
前回の「歯石を取っても腫れが引かない:歯周病治療の次の一手『歯周外科』について」では、基本的な治療で改善しない場合の選択肢をご紹介しました。今回は少し話を戻して、そもそも歯周病治療の「土台」となる、最初の段階についてお伝えします。
歯周病治療というと、歯石を取ってもらう処置(スケーリング)を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際にはその前段階として、「歯周基本治療」と呼ばれる一連の取り組みがあり、これが歯周病治療全体の土台になります。歯周基本治療には、歯石やプラークの除去だけでなく、患者様ご自身によるセルフケアの見直しも含まれています。
歯周基本治療の中でも特に重要な位置づけにあるのが、TBI(Tooth Brushing Instruction、ブラッシング指導)です。「毎日磨いているのに歯ぐきの腫れが引かない」という方の多くに共通するのが、磨いているつもりでも、実際にはプラークが残りやすい部分に磨き残しがあるケースです。自己流の歯みがきでは、こうした磨き残しに気づきにくいことがあります。TBIでは、実際の歯並びやブラッシングの癖に合わせて、どの部分に磨き残しが多いか、どのような角度・力加減で磨くとプラークを効率よく落とせるかを、個別に確認しながらお伝えします。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスなど補助的な清掃用具の使い方も、この指導に含まれます。
歯周病治療の効果は、歯科医院での処置だけで決まるものではなく、日々のセルフケアの質にも大きく左右されると考えられています。どれだけ丁寧にスケーリングを行っても、ご自宅でのケアで新たなプラークが蓄積してしまえば、炎症は再び悪化しやすくなります。このため歯周基本治療では、スケーリングによるプロフェッショナルケアと、TBIを通じたセルフケアの底上げを、並行して進めていくことを大切にしています。
以前ご紹介した「歯周外科」は、この歯周基本治療を丁寧に行った上でも改善が難しい場合に検討される、いわば次の一手です。歯周基本治療というセルフケアの土台が整っていない状態で歯周外科を行っても、術後の管理が難しくなり、せっかくの治療効果が長続きしにくいとも言われています。
大倉山にある当院でも、歯周病治療の最初のステップとして、まずはお一人おひとりの磨き方の癖を確認するところから始めています。「歯みがきには自信がある」という方でも、専門的な視点から見ると意外な磨き残しが見つかることは珍しくありません。歯ぐきの腫れや出血が気になる方は、まずはご自身のブラッシングを見直すところから、ご相談いただければと思います。
本コラムは一般的な情報提供を目的としています。治療の適応可否は、実際の診察・検査に基づき個別に判断いたします。
